こんにちは、獣医師まーちゃんです!
突然ですが、膵炎になりやすい犬・膵炎になりやすい食事があることを知っていますか?
膵炎は時に命を落としてしまう、侮れない疾患です。どんな症状が出たら膵炎を疑わなければならないのかを知っておくことで、重症化を回避できるかもかれません。
そして愛犬の膵炎を予防するためにはズバリ「食事管理」が大切です!
犬の膵炎について詳しく解説します。
- 膵臓には消化に関わる外分泌機能と、ホルモンに関わる内分泌機能がある
- 膵炎は消化酵素が活性化し、自分の膵臓まで消化してしまうことで生じる
- 膵炎になりやすい犬はこの3つ!
- 肥満犬や不適切な食事をしている犬
- 高脂血症の犬
- 代謝異常の病気を持つ犬
- 膵炎を疑う症状
- 膵炎の診断と治療
- 膵炎の予防はズバリ「食事管理」
膵臓の役割
膵臓は、胃と十二指腸の間に存在する臓器です。消化液を分泌する膵腺細胞(外分泌機能)とホルモンを産生する膵島(内分泌機能)で構成されています。詳しく見ていきましょう。
膵臓の約90%は膵腺細胞で構成されています。膵腺細胞から膵液がつくられ、膵管を通って十二指腸に分泌されています。膵液には、炭水化物を分解するアミラーゼ、タンパク質を分解するトリプシノーゲン(十二指腸でトリプシンになる)、脂肪を分解するリパーゼといった様々な消化酵素が含まれており、食物を分解するのに役立っています。
残りの約10%は内分泌機能を司る膵島(ランゲルハンス島)で構成され、α細胞、β細胞、δ細胞という3種類の細胞が存在します。α細胞からはグルカゴン(血糖値上昇作用)、β細胞からはインスリン(血糖値下降作用)、δ細胞からはソマトスタチン(インスリンやグルカゴンの分泌抑制)が分泌され、血糖値を正常に保つように機能しています。
膵炎とは
膵液中に含まれるトリプシノーゲンは、十二指腸でトリプシンに活性化され、タンパク質を分解しています。
このトリプシノーゲンが何らかの原因により早期に活性化され、他の様々な消化酵素も活性化し、膵臓を自己消化、炎症を引き起こした状態が膵炎です。この炎症は周囲の臓器にまで及ぶこともあります。
急性膵炎と慢性膵炎の2種類がありますが、これは病理組織学的な所見に基づいた名前であり、臨床症状の経過を示しているわけではありません。慢性膵炎でも急に症状が悪化し、急性期の症状が生じることもあるのです。この場合は急性膵炎との区別は難しくなります。
膵炎になりやすい犬種とは
膵炎の原因として、人間ではアルコールや胆石が挙げられますが、犬ではそうではありません。実は原因が不明のことも多いのです。その中でも膵炎になりやすいと言われているものをご紹介します。
① 肥満犬や不適切な食事をしている犬
•••肋骨が触れないくらい脂肪がついている犬は肥満です。肥満でなくても、ゴミ箱漁りをする、拾い食いをする、脂肪分の多いご飯を与えられている場合は膵炎になりやすいです。
② 高脂血症の犬
•••高脂血症とは血液中のコレステロールや中性脂肪が高い状態を指します。遺伝的には、ミニチュア・シュナウザー、シェットランド・シープドッグ、ロットワイラーがなりやすいとされています。
③ 代謝異常の病気を持つ犬(糖尿病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能亢進症など)
•••これらの疾患も②のように高脂血症を引き起こします。
膵炎を疑う症状
犬の膵炎を疑う症状は以下の通りです。
✔️ 軽度〜重度の腹痛
•••右上腹部を押すと痛みにより犬が嫌がるそぶりを見せます。重度になると、伏せの姿勢でお尻をあげた「祈りの姿勢」をとることもあります。
✔️ 食欲不振
✔️ 嘔吐
•••膵臓の炎症が胃腸や腹膜に波及すると、消化不良や胃からの排出遅延が生じ、嘔吐を引き起こします。軽症の場合はたまに嘔吐するくらいですが、進行してくると間欠的な嘔吐が見られます。
✔️ 下痢
•••膵臓は結腸に接していますので、腸炎を引き起こし、下痢が認められることがあります。鮮血が混じることもあるでしょう。
✔️ 黄疸
•••慢性膵炎の場合、膵臓が胆管を閉塞してしまい、黄疸を引き起こします。
軽症の場合は食欲不振や軽い腹痛のみにとどまることもあり、見逃したり様子を見てしまうかもしれません。しかし、早期に治療するに越したことはありませんので、怪しいかもと思った場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
膵炎の診断
血液検査や画像検査(レントゲンや超音波検査)から、総合的に膵炎の診断を行います。
血液検査
血液検査については、症状によって異常値の出る項目も変わってくるので、一概には言えません。多くの場合は、炎症により白血球や急性炎症タンパク(CRP)の上昇が認められます。また、膵特異的リパーゼ免疫活性(PLI)の測定も有用です。
レントゲン
急性膵炎で激しい嘔吐や腹痛を示している場合、同じような症状を示す疾患として急性腸閉塞の除外をしなければなりません。(腸閉塞の場合はレントゲンで消化管の拡張やガスの充満が認められます。)
超音波検査
急性膵炎では、膵臓の浮腫や周囲の脂肪壊死、腹水の貯留が認められるため、超音波検査がとても役立ちます。
膵炎の治療
膵炎の治療は、軽症の場合は通院で対応できる場合もありますが、重症の場合は命を落とす可能性もあり、入院による集中治療が必要になります。
静脈点滴
静脈点滴を行うことで、嘔吐や下痢による脱水の改善や膵臓への血流を維持します。膵臓への血流が保たれていないと、膵臓は壊死していきますので点滴はとても重要となります。また、嘔吐や食物摂取量の低下により低カリウム血症が生じます。低カリウム血症は筋力の低下や不整脈などを引き起こすため、点滴により補正を行います。
鎮痛剤や制吐剤
膵炎は激しい痛みを伴いますので、鎮痛剤を使用します。また嘔吐に対しては制吐剤を使用します。
栄養管理
以前は急性膵炎に対して絶食絶水が推奨されていましたが、現在は早期に栄養補給をすることが望ましいとされています。嘔吐などが治ってきて食欲が戻れば、低脂肪食を少量から与え始めます。食欲が戻らない場合は経鼻食道チューブによる栄養補給を行います。
膵炎を予防するには
普段からできることは「食事管理」です。
高カロリーなご飯を与えていたり、残飯を与えているなど不適切な食事管理をしていると膵炎の発症リスクが高まります。市販のドッグフードを与えている場合は体重による給与量を守りましょう。手作り食を与えている場合は栄養が偏らないように。食事管理ができていれば肥満にもならないでしょう。肥満の場合は食事管理が間違っている場合がありますので、かかりつけの獣医さんに相談してみると良いかと思います。
一度膵炎になった場合は、再発の可能性がありますので低脂肪食フードに切り替えると安心です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。膵炎は命を落とす可能性もある怖い病気です。食欲がない、嘔吐などの症状がある場合はすぐに動物病院を受診してくださいね。この記事が少しでも皆さんのお役に立てると嬉しいです。