狂犬病ワクチンシーズンがやってきましたね!みなさんはもうワクチン接種を終えましたか?
毎年4月〜6月は狂犬病ワクチンで動物病院は大忙しなんですよ。
でも先生。毎年狂犬病のワクチンを接種してるけど、狂犬病にかかった犬のニュース聞いたことないし日本にあるの?打たなくてもいいんじゃないですか?
いけません。たしかに日本は狂犬病の清浄国ですが、いつ日本に入ってくるかわかりません。なぜワクチン接種が義務づけられているのか詳しく説明しましょう。
狂犬病は犬だけではなく人を含めたすべての哺乳類に感染する
狂犬病に有効な治療薬はなく、発症すると100%死亡する恐ろしい感染症である
日本は狂犬病清浄国だが、いつ入ってきてもおかしくない状態である
もし日本に狂犬病が入ってきた時、犬だけでなく人間の命も守るためワクチンが義務付けられている
狂犬病ワクチンシーズンは4月〜6月。忘れた場合でも年中接種できる
狂犬病接種をしなかった場合、飼い主は20万円以下の罰金、犬は捕獲される
獣医師の判断のもと、狂犬病ワクチン接種が免除されることがある
狂犬病ってどんな病気?
狂犬病ウイルスによって引き起こされる感染症です。人間を含むすべての哺乳類に感染し、脳炎といった神経症状を引き起こします。発症した場合の有効な治療法はなく致死率はほぼ100%です。
致死率100%、、恐ろしい感染症ですね
感染源
狂犬病の人への感染の99%が「犬からの咬傷」です。咬傷によって唾液に含まれるウイルスが侵入することで感染します。目・口・傷口をなめられるなど粘膜に唾液が接触することでも感染します。
犬以外に、コウモリ・イタチアナグマ・キツネ・アライグマ・スカンク・ネコなど、すべての哺乳類に感染するよ
- アジア・アフリカ地域:犬
- アメリカ大陸・オーストラリア・ヨーロッパ:コウモリ
症状
狂犬病の潜伏期間は犬で2週間〜2ヶ月、人間で1〜3ヶ月です。初期症状から始まり、ウイルスが中枢神経(脳と延髄)に達すると神経症状があらわれます。
犬の場合は狂躁期から麻痺期に移行し、人間は狂躁型で急性に死亡するか、麻痺型で徐々に進行して死亡するかにわけられます。
犬:性格の変化、行動異常
人間;発熱、噛まれた場所の痛みなど
犬:異常興奮(見境なく噛み付くなど凶暴になる)、様々な刺激に過敏に反応する
人間:興奮、不安感、幻覚、恐水症(水を怖がる)、恐風症(風を怖がる)、心肺停止により数日で死亡
犬:歩行不能、よだれをダラダラ流す、嚥下困難など全身の筋肉が麻痺、最終的には昏睡状態で死亡
人間:噛まれた場所から徐々に筋肉が麻痺していき、昏睡状態となって死亡
犬に噛まれた後は暴露後接種予防を行う
死亡率がほぼ100%といわれる狂犬病ですが、噛まれた後ただちに予防接種をうけることで発症を予防することができます。WHOによる指針がありますので覚えておきましょう。
・曝露後、できるだけ早く、水と石鹸で最低15分間、傷口を広範囲に洗浄し、局所治療を行う。
引用:厚生労働省 検疫所 FORTH 狂犬病(ファクトシート)
・WHOの基準を満たす効果的な狂犬病ワクチンの接種を受けること
・狂犬病免疫グロブリンまたはモノクローナル抗体の創部への投与(適応される場合)。
狂犬病の発生状況
結論からいうと、「日本に狂犬病の発生はない」です。
しかし安心はできません。日本周辺の国ではいまだに狂犬病が流行していますし、海外からの帰国者で狂犬病を発症した例は数件報告されています。
発生地域
日本では60年以上、狂犬病の発生はありません。これは狂犬病予防法が施行されて犬への狂犬病ワクチン接種などが徹底され撲滅されたためです。
しかし世界各国ではいまだに狂犬病が流行しています。以下の画像は狂犬病の発生状況です(オレンジ色:狂犬病発生地域、青色:狂犬病清浄地域)。特にアジア・アフリカは発生数が多い傾向にあります。
こうしてみるとほとんどの国で狂犬病が流行していることがわかるかと思います。毎年、暴露後予防接種を受ける人は2,900万人、死亡者は5,500人以上とされています。死亡者は狂犬病として報告された人数のみを集計していますので、実際の発生数はさらに多いです。
日本での狂犬病の発生はないものの、海外渡航者が感染動物に噛まれたなどで、帰国してから狂犬病を発症する事例は数件報告されています。
海外旅行ではなるべく動物(特に犬)との接触は避けましょう。
日本に住んでいると狂犬病は他人事のように思えるかもしれませんが、はたして日本に入ってくる可能性は本当にないのでしょうか?
日本に入ってくる可能性
狂犬病が日本に入ってくる可能性はあります。
日本は島国ですので、地理上動物の行き来もないですし感染は制御されやすいです。しかし海外からの輸送貨物のなかに感染動物がまぎれこむ、誰かが感染動物を密輸するなどウイルスが日本に持ち込まれる可能性は大いにありえます。
狂犬病ワクチン接種について
狂犬病ワクチン接種は飼い主の義務
狂犬病ワクチンは「狂犬病予防法」により毎年1回、接種期間内(4月1日〜6月30日)に狂犬病ワクチンを接種させることが義務付けられています。基本的には生涯の接種が必要です。
なぜ義務なのか
日本で狂犬病が発生した場合でも、感染の拡大を防ぐため、犬や人間を含め動物たちのいのちを守るためです。
人間の狂犬病への感染の99%が「犬」によるものですから、犬のみ狂犬病ワクチン接種を義務づけています。
接種しなかった場合は罰金の対象
接種しなかった、犬に鑑札や注射済票を装着しなかった所有者は、20万円以下の罰金が課せられます。
犬に関しては捕獲、抑留の対象です。
4月〜6月の間に接種するのを忘れてしまった場合はどうなるの?
安心してください。年中接種が可能なので気づいた時点で動物病院で接種しましょう!
狂犬病ワクチンは年度制ですので、翌年以降は狂犬病ワクチン接種期間(4月〜6月)に接種しましょう。
例えば
2024年10月に狂犬病ワクチン接種した 2025年10月に接種する
2024年10月に狂犬病ワクチン接種した 2025年4月〜6月に接種する
新しく犬を迎え入れた場合は要注意
新しく犬をおむかえした場合は、その犬に狂犬病ワクチンを接種する期間が定められています。忘れずに接種しましょう。具体的な期間は以下のとおりです。
生後90日以内の子犬を迎え入れた場合
飼い始めた日に関係なく、生後90日を経過した日から30日以内に接種
生後90日以上の犬を迎え入れた場合
飼い始めた日から30日以内に接種
これも4月〜6月じゃなくて大丈夫ですか?
大丈夫ですよ。動物病院で年中接種できます。
狂犬病ワクチンは他のワクチンに比べて副作用がでにくいとされていますがゼロではありません。初めて狂犬病ワクチンを接種する場合は午前中に接種しましょう!そうすれば時間が経って副作用がでたとしてもかかりつけの動物病院で診察してもらえます。
狂犬病予防注射猶与証明書
基本的に犬は狂犬病ワクチン接種が義務付けられていますが、獣医師の判断のもと狂犬病ワクチンを接種しない場合もあります。この場合は獣医師から「狂犬病予防注射猶与証明書」が発行されます。
- 過去に狂犬病ワクチンで重度の副作用がでた
- 老衰である
- 抗がん剤治療中
- 疾病により著しい体力、免疫力の低下がある
これらの場合はワクチン接種が免除される可能性がありますが、判断はすべて獣医師に委ねられます。当てはまっても必ずしも免除されるわけではありません。
狂犬病ワクチン接種は大切
いかがでしたでしょうか。狂犬病は日本にはないものの世界中に存在している感染症です。他人事ではありません。狂犬病について正しい知識をもつこと、毎年犬に狂犬病ワクチンを接種することが狂犬病の予防につながります。忘れずに接種しましょう!