うちの猫、最近トイレに行くんだけどおしっこが少ししか出てないみたい
トイレのとき痛がっていて、よくみたら血が混じってたわ
これは膀胱炎の診察にくる飼い主さんがよくおっしゃることです。実際、猫ちゃんのおしっこトラブルで病院を受診される方は多いです。中には間違ったケアにより膀胱炎を繰り返してしまう方もいます。
膀胱炎を繰り返さないために、正しいケア方法をしりたい!
こう思われる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、飼い主さんなら知っておきたい猫ちゃんの膀胱炎のサイン、原因や治療法、再発を防ぐケア方法についてわかりやすく解説します。
- 膀胱炎を疑うサインは様々で、中には偶然みつかることもある
- 膀胱炎の原因は大きく分けて、細菌感染・結石・原因不明
- 膀胱炎の治療法は原因によってまったく異なる
- 膀胱炎の再発をふせぐには、ストレス、食事、飲水をチェックしてみよう
見逃さないで。膀胱炎を疑うサインはこれ
膀胱炎を疑う症状はさまざまあります。以下のような症状がみられたら、膀胱炎を疑いましょう。
トイレに頻繁に行くがおしっこが少ししか出ていない
おしっこをするときに痛そうにしている(なき声が聞こえる)
トイレの時間が長い
おしっこの色が赤い、異様なにおいがする
トイレに間に合わず、他の場所でしてしまう
おしっこが出ていない
人間でも膀胱炎になると、何度もトイレに行くけど少ししか出ない、残尿感がある、排尿痛がある、重度になると血尿といった症状がでますよね。これは猫ちゃんの膀胱炎でも同じなんです。人間はトイレに間に合わず漏らしてしまうことはあまりないですが、猫ちゃんはトイレに間に合わないこともあります。
上記の中で「おしっこが出ていない」というのはいちばん緊急を要し、最悪のばあい死に至ります。炎症によりつくられた物質が尿道を塞いでしまうからです。これを「尿閉」といいます。尿閉が続くと、急性腎不全や尿毒症となり死に至る可能性もありますのですぐに動物病院を受診しましょう。
これらの症状が見られなくても健康診断などで偶然みつかることもあります。猫ちゃんは非常に我慢強く、異変があったとしても飼い主には普段通りに過ごしているようにみえてしまうんです。定期的な健康診断を受けることも大切ですね。
膀胱炎の原因
膀胱炎の原因は①細菌感染、②結石、③原因不明(特発性)に分けられます。
これらの原因は、問診、触診、エコー検査、レントゲン、尿検査をおこない、総合的に判断されます。
原因① 細菌感染
その名の通り、細菌感染により膀胱炎となります。
皮膚や便、汚れた環境をから陰部を通じて膀胱に感染します。メスはオスより尿道が短く感染しやすいです。
原因② 結石
猫ちゃんの体質や、食べているフードにより結石ができてしまいます。この結石により膀胱内が傷つき、膀胱炎となります。
原因③ 原因不明(特発性)
猫ちゃんのおしっこトラブルの原因で一番多いのが、この「特発性膀胱炎」です。猫の下部尿路疾患の原因のうち半数以上がこの特発性膀胱炎なんです!
特発性って何?と思われた方が多いと思います。説明していきますね。
原因がわからない膀胱炎のことを指します。
考えられる要因としては、猫ちゃんにストレスがかかっている、水分量の少ないドライフードを与えている、飲水量が少ない、肥満、神経質な性格などが考えられます。
ストレスの例としては、環境の変化、同居動物との関係性、気候の変化、知らない人が家に来た、フードを変更した、トイレが汚いなど、猫ちゃんがストレスと感じるもの全てがストレスとなります。神経質な性格もストレスを感じやすいでしょう。
膀胱炎の治療
膀胱炎の治療は原因によって異なります。
- 細菌感染の場合は「抗生剤」
- 結石の場合は「処方食、外科手術」
- 特発性の場合は「環境改善、食事療法、鎮痛剤、サプリメントなど」
細菌性膀胱炎の治療
細菌性膀胱炎の場合は、抗生剤の処方となります。感染している細菌の種類によって効果のある抗生剤は異なりますので、まずは尿路感染によく効く抗生剤がえらばれます。
何度も感染をくりかえしている場合は、今まで使用していた抗生剤に対して耐性ができ、効かない場合があります。その時は薬剤感受性試験(どの抗生剤が効くのか調べる試験)を行い、抗生剤をきめます。
膀胱結石の治療
結石の種類には、主にストラバイト結石・シュウ酸カルシウム結石というものがあります。
ストラバイト結石の場合は専用フードに変更することで溶かすことができます。『専用フード=薬』だと思ってください。
専用フードと別のフードを混ぜる、専用フード以外におやつをあげている、これは治療効果がなくなりますので必ず専用フードのみを与えましょう。
シュウ酸カルシウム結石の場合は、残念ながら専用フードで溶かすことはできません。手術が必要となる場合があります。
特発性膀胱炎の治療
何も治療をしなくても5〜7日で治ってしまうことが多いです。痛みを強く感じている場合は鎮痛剤を使用します。
何もしなくても治るなら別にいいんじゃない?
その考えは危険ですよ。かなりの確率で再発を繰り返してしまいますから
そうなんです!特発性膀胱炎は何もしないと再発をくりかえすことが特徴。再発を防ぐためにストレスを除去、食事療法、サプリメントの使用などをおこないます。こちらは次の項目で詳しく説明しますね。
膀胱炎の再発を防ぐために気をつけること
膀胱炎は再発しやすいので(とくに特発性膀胱炎)ケアはとても重要です。以下のことに注意してみましょう。
- ストレスケア
- 水分摂取量を多くする
- 食事に気をつける
- サプリメント
ストレスケア
特発性膀胱炎の原因のひとつが「ストレス」でしたよね。再発を防ぐためにはストレスケアがとても重要になってきます。といっても猫ちゃんも十人十色。何がストレスになっているか理解してあげられるのは、獣医師ではなくいちばん近くでみている飼い主さんだと思っています。猫ちゃんの性格や家庭環境からストレスになっているものを探ってみましょう。
猫ちゃんがストレスを感じやすい言われているのは以下のとおりです。
- トイレが汚い、トイレの数が少ない、トイレが狭い
- 猫ちゃんは清潔を好みますのでトイレ掃除はこまめに行いましょう
- トイレの数は猫の頭数+1個が推奨されています
- 人間も狭いトイレではリラックスできないですよね。「猫の体長(首から尻尾の付け根までの長さ)×1.5cm」が理想とされています
- 引っ越しによる家庭環境の変化
- 猫ちゃんは慣れ親しんだ環境で安心しますので、引越しは大きなストレスとなります
- 知らない人が家に来た
- 知らない人が家に来る、ピンポンがなると逃げてしまうのは怖がっている証拠です
- 多頭飼いによる同居動物との関係性
- 同居動物との相性が悪かったり、ケンカがきっかけでストレスを感じることもあります。お互いが距離を保てるように環境を整えてみましょう。高いところから見渡せるキャットタワーもおすすめです。
- 休める場所がない
- 猫ちゃんは一人でくつろぐことが大好きです。隠れてくつろげるキャットハウスやキャットタワーがおすすめです。
- 庭に外の猫がやってくる
- 知らない猫が視界に入ることもストレスになります。窓にカーテンをつけるなど外が見えないように対策しましょう。
- 気候変動
- 人間も気候の変化で体調を崩す人がいるように、猫ちゃんも気候の変化がストレスになることがあります。対策の使用はありませんが、ストレスになっているかも、と理解してあげることも大切です。
水分摂取量を多くする
同じフードでもドライフードとウェットフードでは、ウェットフードの方が特発性膀胱炎の再発が少なかったという研究結果があります。
フードだけではなく、いつでも新鮮なお水を飲める環境をつくることも再発を防ぐためにとても重要です。
食事に気をつける
ストラバイト結石の猫ちゃんは食事に気をつけましょう。
ストラバイトは尿がアルカリ性に傾くことで発生します。そのため尿を酸性化してくれる専用フードを食べ続ける必要があります。
治ったからといって元のフードに戻したら再発してしまいます!
特発性膀胱炎の原因の一つに「肥満」がありました。肥満の猫ちゃんはダイエットフードに変えるのも再発を防ぐために有用です。
サプリメント
EPAやDHAといったオメガ3脂肪酸のサプリメントは抗炎症作用があり補助的に用いてもいいでしょう。
リラックス効果のあるサプリメントも効果があるかもしれません。
まとめ
猫ちゃんは我慢強い動物です。症状を隠してしまうかもしれませんが、飼い主さんが膀胱炎に対する知識を持っているかどうかで小さな異変に気づくことができるかもしれません。そして一度膀胱炎になった子は再発しないように生活を見直してみてくださいね。