先生、最近飼い始めた子猫が下痢をし始めて心配です。どうしたら良いでしょうか。
大丈夫ですから、落ち着いてくださいね。
子猫の下痢は数日で治ってしまうこともあれば、命に関わることもあります。
子猫の下痢の原因や対処法、動物病院への受診について詳しく説明しますので、猫ちゃんの状況と照らしあわせてみてください。
- 下痢の種類は、軟便・水様便・粘性便・血便・黒色便
- 下痢の原因は、消化不良・食物アレルギー・寄生虫・ウイルス・細菌・環境の変化・異物などさまざま
- 子猫が下痢をしたときの対処法4選
- 子猫が下痢をした時、動物病院を受診する目安は6つ
- 動物病院ではこんなことを聞かれるよ!
どんなウンチが下痢なの?
そもそも下痢と聞いてどんなウンチを想像しますか?
下痢といえば、水下痢でしょうか?
実は下痢にも種類があるんですよ。見ていきましょう。
いわゆる「いいウンチ」は細長い楕円形で程よく水分を含んで表面がつやっとしているウンチを指します。
いっぽう「下痢」とは、正確に言うと水分の多いウンチを指します。下痢の種類は以下の通りです。
- 水様便
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形のない水のようなウンチを指します。一度にドバッと水下痢をすることもあれば、少量の水下痢を何回もすることも。
- 粘性便
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ウンチにゼリーのような粘液が付着しているものを指します。
この粘液は腸の粘膜から分泌されたものです。あからさまにゼリー状についている場合は異常です。
ひどいと、ウンチはほんの少量しか出ずほぼ粘液を排泄する猫ちゃんもいます。
- 軟便
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水分量が多く、柔らかいウンチを指します。
- 血便
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血が付いているウンチを指します。大腸の出血や、うんちをする時に肛門が切れた場合にみられます。
- 黒色便
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真っ黒なウンチをさします。上部消化管(胃や小腸)での出血が原因です。
これらは組み合わさって排泄されることもあります。
普段からウンチをよく観察し、いち早く下痢に気づけると安心です。
子猫の下痢の原因
子猫に下痢を引き起こす原因として考えられるものを見ていきましょう。
消化不良
子猫は消化管が未発達で、消化不良を起こしやすい時期です。子猫が下痢をする食事の要因は4つです。
- ミルクの温度が冷たい
- 牛乳を与えている
- 離乳食を始めたばかりである
- 離乳食からカリカリに変更した
ミルクを与えている時期は、ミルクが冷たいと消化不良を起こしやすいので適正温度で与えましょう。猫用ミルクの代わりに牛乳を与えている場合は要注意です。猫は「乳糖不耐性(乳糖の消化酵素であるラクターゼが不足していること」があります。市販の猫用ミルクにはラクターゼが配合され乳糖不耐性の対策がとられていますが、牛乳にはそのような対策はないので下痢をしてしまいます。栄養面からも牛乳だと子猫に必要な栄養素が足りないため適していません。
ミルク→離乳食や、離乳食→カリカリといった食事の変更でも消化が追いつかず下痢をしてしまうことがあります。変更直後に下痢をした場合は、前のご飯に戻してみましょう!
食物アレルギー
消化不良以外にも、食事が原因で下痢をするものとして「食物アレルギー」があげられます。そのキャットフードに含まれる原材料の何かが原因でアレルギー症状が出てしまいます。
アレルギー症状としては、下痢や嘔吐などの消化器症状だけのこともあれば、皮膚のかゆみなど皮膚の症状がでることもあります。
例えば、いつもこのフードを食べると下痢をするな・特定の味のフードを食べると下痢をするなといった場合は食物アレルギーである可能性が高いです。原材料を確認して動物病院を受診しましょう。
寄生虫
寄生虫感染も下痢を引き起こす要因となります。
野良猫だった子、外に出る子は寄生虫に感染している/するリスクが高いです。人間が知らずに寄生虫を家に持ち込むこともあるので、室内飼いの猫ちゃんでも安心はできません。ペットショップから感染した場合もあるのでお迎えした直後の猫ちゃんが下痢をした場合も寄生虫感染を疑います。感染初期は無症状のことが多いですが、感染が進行すると下痢や嘔吐を引き起こします。
寄生虫に感染しているかどうかは、糞便検査でわかります。動物病院を受診する際はウンチを持参してくださいね。
ちなみにですが、寄生虫の感染が目に見えてわかることもあります。
ウンチに白い紐みたいなのが混ざってます!
おしりに白い米粒みたいなのがついてるんですけど、なんですか?
こういったものは、寄生虫であることが多いです。実際見たら気持ち悪いかもしれませんが、捨てずにジップロックなどにいれて動物病院に持っていきましょう。
ウイルス
子猫の下痢で注意したい代表的なウイルス性の疾患は、「汎白血球減少症」と「猫伝染性腹膜炎」です。
- 汎白血球減少症
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パルボウイルスに感染している猫の糞便に接触することで感染します。パルボウイルスは非常に感染力が強く、外に出る猫が知らずに感染したり、人間の衣服を介して感染することもあります。子猫(特に3〜5ヶ月)に発症しやすく、白血球の減少・下痢(水様性〜血便)・嘔吐などが認められ、死に至ることもあります。ワクチンが有効です。
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)
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猫腸コロナウイルスが突然変異することで発症し、死に至ることもある疾患です。猫腸コロナウイルスは多くの猫が保有しており、野良猫・ペットショップ・同居猫などの糞便から容易に感染します。この猫腸コロナウイルス自体は無症状なのですが、ストレスなどによりウイルスが突然変異してFIPウイルスになると症状がでます。FIPの症状は様々ですが、その一つとして下痢もあげられます。
細菌
下痢を引き起こす代表的な細菌感染症としてサルモネラ症・カンピロバクター症・大腸菌症があげられます。腸内細菌のバランスが崩れたり、免疫が弱いことにより下痢を引き起こします。
環境の変化
環境の変化によりストレスが加わると体調を崩し、下痢をしてしまうことがあります。
例えばペットショップから引き取った直後はがらっと環境が変わり、適応するのに時間がかかることもあるでしょう。
異物を食べた
遊びたい盛りの子猫は家の中でやりたい放題。気をつけたいのが異物の誤食です。おもちゃに限らず、落ちているものを誤食して消化管を傷つけてしまい下痢や嘔吐を引き起こします。特に子猫の腸管はとても細いので小さいものでも閉塞してしまうリスクがあります。
それ以外にも、人間の薬やサプリメント・有害植物を誤食して中毒により下痢が認められることもあります。
誤食の疑いがある場合は早急に動物病院を受診しましょう。
子猫の下痢の対処法
まず子猫の状態を把握しましょう
まずは子猫の下痢の様子や一般状態を確認しましょう。様子を見てもいいのか、病院に連れて行くべきなのかの判断目安としては、後述する「動物病院を受診する目安」を参考にしてください。
- どんな下痢をしているのか
:軟便なのか水様便なのか・血は混ざってないか・下痢をするときに痛がってないか など - 下痢の頻度
:1日に1回だけなのか・1日に何回もするのか - 下痢以外の症状の有無
:元気や食欲はどうか・熱っぽくないか・吐き気はないか など
原因がわかる場合はその対処をしましょう
「食事を変更したら下痢になった」といった下痢の原因が推測できる場合は、食事を元に戻して治るかみるといいでしょう。食事を元に戻して下痢が治れば食事が原因だった可能性が高いです。
食事を変更する場合は、今までのごはんに新しいごはんを少量混ぜて徐々に慣らすといいでしょう。
ご飯は普段より少なくてOK
下痢をしているときは消化管への負担を減らすために食事の量を減らしましょう。絶食してしまうと、腸への栄養供給が断たれてしまいますし、子猫の年齢によっては少しの絶食が低血糖を招くこともあります。絶食はせずに、普段より少なめを意識するといいです。
脱水に気をつける
下痢をしていると脱水しやすいため、飲水環境を整えてあげましょう。ドライフードをふやかしてあげることで水分摂取量を増やすこともできます。
動物病院への受診について
下痢をした場合、動物病院を受診すべきか迷うこともあると思います。動物病院に行くのがはじめてという方は、どんなことを聞かれるのか不安に思われるかもしれません。
「動物病院を受診する目安・持って行くもの・こんなことを聞かれますよ」というのを説明します。
受診する目安
まず健康な子猫の排便回数は、1日に1〜2回程度です。中には2日に1回くらいの子もいます。ミルクを飲んでいる時期はそもそもウンチが緩いです。
1〜2日くらいで下痢便が改善されるようでしたらそのまま様子を見て大丈夫でしょう。しかし以下のことに当てはまる場合は動物病院を受診してください。
- 下痢の回数や頻度が多い場合
- ミルクを飲んでいても水下痢の場合
- ウンチに血が混じっている、粘液がついたどろっとウンチをしている場合
- 下痢以外にも症状が出ている場合(元気がない、食欲がない、嘔吐があるなど)
- 下痢の症状が改善したが、また繰り返す場合
- 特定のフードで下痢をする場合(食物アレルギーが疑われる場合)
様子を見ることで状態が悪化することはあってはなりません。とくに初期の段階では元気があって食欲もあり、疾患が見過ごされることもあります。上記に当てはまっていなくても、たった1回の下痢だとしても、心配であれば動物病院を受診することが一番です。
ウンチは必ず持っていきましょう
下痢をしている時は必ず「糞便検査」を行いますので、ウンチを持参しましょう。その際は以下のことに注意してください。
- なるべく新鮮なウンチを持っていきましょう
:受診当日のウンチが一番好ましいです。当日にウンチをしなかった場合は前日午後のウンチを持参しましょう。 - ウンチはビニール袋やジップロックに入れていきましょう
- 猫砂は取り除いて持っていきましょう
- 水下痢でペットシーツに染み込んでしまっている場合でも、一応持っていきましょう
:これだと糞便検査はできないかもしれませんが、ウンチの状態を把握できますので持参しましょう。持参が難しい場合はスマホで撮影したものでもOKです。
こんなことを聞かれるよ、答えられるようにしておきましょう
「子猫は下痢をしやすい」という理由で様子を見がちですが、中には他の子に感染してしまう・命に関わる場合もあるため問診はとても重要なんです。動物は自分で話せませんので、飼い主さんが責任を持って獣医師に伝える必要があります。
- 下痢をしているのはいつから?下痢している時の様子は?
:具体的に何日前からなのか、下痢の回数、下痢をしているときに痛がるなど、詳細に伝えましょう。 - 何を食べて下痢をした?
:食事が原因の下痢であることも多いので、どんなフードを食べていたのかも伝えましょう。 - 下痢以外の症状はある?
:元気がない、食欲がない、嘔吐もしている、熱があるなど。 - ワクチン接種歴
:これは特に重要です。ワクチン未接種の場合は特に猫汎白血球減少症という感染症も考えなければなりません。 - 猫エイズ、猫白血病の検査をしているか
:これらの疾患も下痢などの症状を引き起こします。特に猫エイズは感染して最初の数ヶ月は軽い下痢を繰り返したりします。 - 飼育環境
:単頭飼いなのか、多頭飼いなのか。
:野良猫を保護した場合や、外に出ることがある場合は寄生虫の可能性が高まります。 - 多頭飼いの場合は他の子に症状が出ているか
:他に体調が悪い子がいる場合は感染症の可能性が高まります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。子猫が下痢をした時は、思い当たるきっかけは無いか?寄生虫やウイルスへの感染の可能性がありそうか?など考えなければならないことが沢山あります。心配な時は動物病院を受診しましょう!